「うちはみんな仲がいいから大丈夫」。相続トラブルを経験した家族のほとんどが、最初はそう思っていました。
相続は、それまで表に出なかった「家族の温度差」を一気に可視化します。普段の関係が良好でも、お金・不動産・介護の負担が絡んだとたんに、話し合いがこじれるケースは珍しくありません。
このサイトは一般的な参考情報を提供しています。個別の法律・税務判断は専門家(司法書士・税理士・弁護士等)にご相談ください。
火種① 不動産——「誰が住むのか」「どう分けるのか」
相続財産に占める不動産の割合は高く、かつ「分けにくい」という特徴があります。現金なら等分できますが、土地や建物はそのままでは分割できません。
よくある場面:
- 実家に親と同居していた長男が「当然、自分が継ぐ」と思っている
- 遠方に住む他の兄弟が「不動産も含めて等分すべき」と主張する
- 結果として「売って分ける」か「一人が買い取る」かで対立する
売るとなれば思い出の実家を手放すことになり、感情的なしこりが残ります。買い取るとなれば資金の準備が必要になります。どちらにしても「話し合いが必要」な問題です。
火種② 認知症——「手続きができなくなる」タイムリミット
親が認知症と診断された後、判断能力が低下すると、銀行口座の解約・不動産の売却・遺言書の作成などが法律上できなくなります。
問題になるのは「気づいたときにはもう手遅れ」というケースです。
- 親の口座が凍結されて、介護費用が引き出せなくなった
- 親が元気なうちに不動産を売って老人ホームの費用に充てたかったが、認知症後では手続きができない
- 「生前贈与しておけばよかった」と後悔する子供たち
認知症は進行してから対応しても間に合わないことが多く、「元気なうちに動く」ことが重要です。
火種③ 兄弟間の温度差——「介護した分だけ多くもらえると思っていた」
相続では「誰がどれだけ親の面倒を見たか」が感情的な火種になります。法律上は「寄与分」という制度がありますが、実際の話し合いでは感情が先行しやすく、合意が難しいケースも多くあります。
- 長女が10年間、親元を離れずに介護をしてきた
- 他の兄弟は遠方で「お見舞い」程度しか関わっていない
- 相続の法定分は均等——長女が納得できない
この温度差は、相続が始まる前からすでに存在しています。「誰が一番大変だったか」という感情が残ったまま遺産の話し合いに入ると、言葉が荒くなりやすくなります。
3つの火種が重なると、より複雑になる
「不動産+認知症+介護の温度差」がすべて重なるケースは、決して少なくありません。それぞれ単独でも対処が必要ですが、複合すると話し合いの出口が見えにくくなります。
大切なのは「火種があるかどうかを早めに確認すること」です。問題が起きてから対応するより、起きる前に「うちの場合はどうか」を確認しておく方が、選択肢が広くなります。
まず何をすればいいか
難しく考えなくて大丈夫です。最初の一歩は「確認すること」から始まります。
- 実家の不動産が誰の名義になっているか確認する
- 親が「万が一の話」を家族にしたことがあるか思い出す
- 介護について兄弟間で話したことがあるかどうかを振り返る
これだけでも、自分の家の「火種」がどこにあるかが見えてきます。
専門家相談について:不動産の名義・遺言書の作成・家族信託の設定などは、司法書士や弁護士への相談が出発点になります。「どこに相談すればいいか」は 記事08「相談先の選び方」 も参考にしてください。
